【最終章】ずうっと一緒
ハルトの脈動が完全に途絶えた。 耳を突き刺すような静寂と、むせ返るような死の悪臭が部屋を支配した。 「……は、はる……と……っ、おい、……おきろ、よ……っ」 ソウタは、血まみれのナイフを握ったまま、ハルトの亡骸の上に跨り続けていた。ハルトを殺せば、この地獄から抜け出せると思っていた。ハルトがいなくなれば、自分はまた「まとも」な人間に戻れるのだと。 だが、現実は残酷だった。 ハルトの死体から伝わる冷たさが、ソウタの剥き出しの太ももを冷やしていく。それと同時に、ソウタの下半身からは、止めどなく「熱」が溢れ出していた。 「……あ、……ぁ、……っ、あ……っ」 ハルトという唯一の「管理者」を失った衝撃で、ソウタの身体は完全に崩壊していた。 シーツの上に広がっている、血と尿と汚泥の巨大な染み。 それは、ソウタという人間が二度と「清浄」な世界へは戻れないことを告げる、死の刻印だった。 「……っ、うわ、ぁ、あああああああ!!」 ハルトは死んだ。しかし、ハルトの目論見は完璧に達成されたのだ。 ソウタの身体には、ハルトがいなければ呼吸すらままならず、ハルトがいなければ排泄すら恥辱でしかないという「呪い」が、骨の髄まで染み付いている。 一人で生きていくことなど、もうできない。 ハルトなしでは、ソウタはただ、自分の汚れの中で腐っていくのを待つだけの肉塊でしかなかった。 「……そう、だ……。……いっしょ、……いっしょに、いかなきゃ、……っ」 ソウタの瞳に、虚ろな、けれど確信に満ちた光が宿る。 彼は血まみれの手で、再びナイフを握り直した。 そして、かつてハルトが自分を「締める」ために幾度も幾度も締め上げた、あの細い喉元に刃を当てた。 「……あ、……はる、と……っ。……いま、いく、から……っ。……むこうでも、……おせわ、しろよ……っ」 ソウタは、自らの喉を思い切り掻き切った。 グチャリ、という生々しい音。 鮮血が噴き出し、鏡を、壁を、そしてハルトの亡骸を真っ赤に塗りつぶす。 ソウタの身体は大きく跳ね、死の間際の激しい痙攣と共に、最後の一滴まで、身体の中の「汚れ」を外へと吐き出した。 それが、ソウタという人生が奏でる、最後の旋律だった。 ソウタはゆっくりと、ハルトの胸の上に倒れ込んだ。 血と尿と白濁液が混ざり合い、二人の境界線を曖昧にしていく。 その汚濁の海の中で、ソウタは初めて、本当の「安堵」を...